44 記数法
凡算之法、先識其位。
– 「孫子算経」
古代中国では、算木を用いて計算が行われていた。現存する最古の算木は、戦国時代末期のものである。
「孫子算経」では、算木の位置によって数を表現する方法が説明されており、「凡算之法、先識其位」とは、「凡そ算の法は、其の位を識るを先とす」と訳される。
算木は算籌とも呼ばれる。経営工学における中心的な学問であるオペレーションズ・リサーチ(Operations Research、OR)の中国語訳は「運籌学」である。運籌の語源は史記の「運籌策帷幄之中決勝千里之外」に由来する。これは、「籌を帷幄に運らし、勝ちを千里の外に決す」という意味である。
ここでは、10進数、2進数、8進数、16進数の記数法について学ぶ。学習の目標は次の通りである:
- 位取り記数法を理解する
- 任意の記数法から10進数への変換ができる
- 10進数から他の記数法への変換ができる
- 2進数、8進数、16進数の相互変換ができる
- ビットとバイトの概念を理解する
44.1 10進数
私たちが日常的に使っている10進法は、0から9の数字を用いて数を表現する。各数字の位置によってその値が決まる。例えば、123という数は、以下のように表現される:
\[ 123 = 1 \times 10^2 + 2 \times 10^1 + 3 \times 10^0 \]
このように、各数字の位置によってその値が決まる記数法を位取り記数法(くらいどりきすうほう、positional notation)と呼ぶ。
一般に、\(d_n\)をn桁目の数字、\(N\)を10進数の数とすると、以下の式が成り立つ:
\[ N = d_n \times 10^{n-1} + d_{n-1} \times 10^{n-2} + \ldots + d_1 \times 10^0 \]
44.2 他の記数法と底
底(base)とは、使用する数字の種類の数である。10進法では0から9までの10種類の数字を使用するため、底は10である。
- 2進法では0と1の2種類の数字を使用し、底は2である。
- 8進法では0から7までの8種類の数字を使用し、底は8である。
- 16進法では0から9とAからFまでの16種類の数字を使用し、底は16である。
2進法は、2を底とする位取り記数法であり、0と1を使用し、数を表現する。そのため、0, 1の次には1桁を追加して10となり、次は11、100、101と続く。
以下に、10進数、2進数、8進数、16進数の対応表を示す:
| 10進数 | 2進数 | 8進数 | 16進数 |
|---|---|---|---|
| 0 | 0 | 0 | 0 |
| 1 | 1 | 1 | 1 |
| 2 | 10 | 2 | 2 |
| 3 | 11 | 3 | 3 |
| 4 | 100 | 4 | 4 |
| 5 | 101 | 5 | 5 |
| 6 | 110 | 6 | 6 |
| 7 | 111 | 7 | 7 |
| 8 | 1000 | 10 | 8 |
| 9 | 1001 | 11 | 9 |
| 10 | 1010 | 12 | A |
| 11 | 1011 | 13 | B |
| 12 | 1100 | 14 | C |
| 13 | 1101 | 15 | D |
| 14 | 1110 | 16 | E |
| 15 | 1111 | 17 | F |
ここからは、下付き文字を用いて、底を示すことにする。例えば、2進数の101は、\(\texttt{101}_2\)と表記する。10進数の123は、\(\texttt{123}_{10}\)と表記する。
44.2.1 やってみよう
10進数の1~10を3進数で書いてみよう。
44.3 他の記数法から10進数への変換
上記の表を見るとわかるように、2進数2桁目の1は10進数の2で、3桁目の1は10進数の\(2^2\)である。つまり、2進数を10進数に変換する際は、下記のように計算することができる:
\[ d_n \times 2^{n-1} + d_{n-1} \times 2^{n-2} + \ldots + d_1 \times 2^0 = N_{10} \]
例えば、2進数の\(1001_2\)を10進数に変換する場合、以下のように計算する:
\[ 1001_2 = 1 \times 2^3 + 0 \times 2^2 + 0 \times 2^1 + 1 \times 2^0 = 9_{10} \]
\(d_n\)をn桁目の数字、\(R\)を底、\(N\)を10進数の数とすると、以下の式が成り立つ:
\[ N_{10} = d_n \times R^{n-1} + d_{n-1} \times R^{n-2} + \ldots + d_1 \times R^0 \]
また、以下のように書くこともできる:
\[ N_{10} = \sum_{i=1}^{n} d_i \times R^{i-1} \]
例えば、3進数の\(102_3\)を10進数に変換する場合、以下のように計算する:
\[ 102_3 = 1 \times 3^2 + 0 \times 3^1 + 2 \times 3^0 = 11_{10} \]
また、16進数の\(\texttt{1A3F}_{16}\)を10進数に変換する場合、以下のように計算する:
\[ \texttt{1A3F}_{16} = 1 \times 16^3 + 10 \times 16^2 + 3 \times 16^1 + 15 \times 16^0 = 6719_{10} \]
これは、16進数のAが10に相当し、Fが15に相当するからである。
44.3.1 やってみよう
次の数を10進数に変換せよ。 - \(1101_2\) - \(73_8\) - \(\texttt{CAFE}_{16}\)
44.4 2進法、8進法、16進法
2進法、8進法、16進法は、全て2の累乗を底とする記数法であるため、変換は簡単に行える。
| 2進数 | 16進数 |
|---|---|
| 0000 | 0 |
| 0001 | 1 |
| 0010 | 2 |
| 0011 | 3 |
| 0100 | 4 |
| 0101 | 5 |
| 0110 | 6 |
| 0111 | 7 |
| 1000 | 8 |
| 1001 | 9 |
| 1010 | A |
| 1011 | B |
| 1100 | C |
| 1101 | D |
| 1110 | E |
| 1111 | F |
2進数の4桁ごとに16進数の1桁に対応する。例えば、2進数の\(1010110_2\)は、4桁ごとに区切ると\(0101\ 0110\)となり、これを16進数に変換すると\(56_{16}\)となる。
16進数を2進数に変換する場合は、各16進数の桁を4桁の2進数に変換すればよい。例えば、16進数の\(\texttt{1A3F}_{16}\)は、以下のように変換される:
\[ \texttt{1A3F}_{16} = 0001\ 1010\ 0011\ 1111_2 \]
8進法も同様に、3桁の2進数に対応する。
| 2進数 | 8進数 |
|---|---|
| 000 | 0 |
| 001 | 1 |
| 010 | 2 |
| 011 | 3 |
| 100 | 4 |
| 101 | 5 |
| 110 | 6 |
| 111 | 7 |
2進数の3桁ごとに8進数の1桁に対応する。例えば、
\[ 1010110_2 = 001\ 010\ 110_2 = 126_8 \]
44.4.1 やってみよう
次の数を16進数と8進数に変換せよ。 - \(11010110_2\) - \(101110011_2\) - \(1111000100101001_2\)
次の数を2進数に変換せよ。 - \(\texttt{1A3F}_{16}\) - \(\texttt{7B2}_{16}\) - \(\texttt{35}_{8}\)
44.5 10進数から他の記数法への変換
10進数から他の記数法への変換は、下記の手順で行うことができる:
- 与えられた値を底で割り、商と余りを求める。
- 商が0になるまで繰り返す。
- 商が0になったら、余りを逆順に並べる。
このようなある問題を解決する手順をアルゴリズムと呼ぶ。
このアルゴリズムは、特定の条件(商が0になるまで)を満たすまで繰り返し処理を行う。これは、反復構造(iterative structure)と呼ばれる。
アルゴリズムは、コンピューターサイエンスや経営工学の分野では中心的な概念でる。大学4年間、経営システム工学科では、さまざまな問題解決のためのアルゴリズムが学ばれる。
例えば、10進数の\(113_{10}\)を2進数に変換する場合、以下のように計算する:
\[ 113 \div 2 = 56 \quad R_1 = 1 \\ 56 \div 2 = 28 \quad R_2 = 0 \\ 28 \div 2 = 14 \quad R_3 = 0 \\ 14 \div 2 = 7 \quad R_4 = 0 \\ 7 \div 2 = 3 \quad R_5 = 1 \\ 3 \div 2 = 1 \quad R_6 = 1 \\ 1 \div 2 = 0 \quad R_7 = 1 \]
余りを逆順に並べると、\(1110001_2\)となる。
検算として、\(1110001_2\)を10進数に戻すと:
\[ 1110001_2 = 2^6 + 2^5 + 2^4 + 2^0 = 113_{10} \]
もう一つの例として、10進数の\(268_{10}\)を16進数に変換する場合、以下のように計算する:
\[ 268 \div 16 = 16 \quad R_1 = 12 \\ 16 \div 16 = 1 \quad R_2 = 0 \\ 1 \div 16 = 0 \quad R_3 = 1 \]
余りを逆順に並べると、\(\texttt{10C}_{16}\)となる。
44.5.1 やってみよう
次の10進数を2進数、8進数、16進数に変換せよ。
- \(45_{10}\)
- \(100_{10}\)
- \(255_{10}\)
44.6 ビットとバイト
情報量の最小単位はビット(bit)である。bitはbinary digit(2進数の桁)を略したもので、2進法の1桁分の情報を表す。バイト(byte)は、通常は8 bitで構成される。
例えば、\(\texttt{0101 0010}_{2}\)の情報量は8 bitであり、1 byteに相当する。
1 bitは0または1のいずれかの値をとる。そのため、1 bitは2種類の物事を表現できる。例えば、電源のオン/オフ、陽性/陰性、真/偽などである。
ビット数が増えると、表現できる種類も増える。2 bitでは、00、01、10、11の4種類を表現できる。8 bitは256種類(\(2^8\))を表現できる。
| 1 Bit | 2 Bit | 3 Bit |
|---|---|---|
| 0 | 00 | 000 |
| 1 | 01 | 001 |
| 10 | 010 | |
| 11 | 011 | |
| 100 | ||
| 101 | ||
| 110 | ||
| 111 |
一般に、\(n\) bitは\(2^n\)種類の情報を表現できる。
44.7 ビットパターン
このように、より複雑な情報を表現するために、複数のビットを並べるものはビット列(bit string)と呼ばれる。
コンピューターが扱うデータは、一般的に8, 16, 32, 64ビットなど、2の累乗のビット数で構成される。特定のビット数を持つデータは、ビットパターン(bit pattern)と呼ばれる。ビットパターンは,数値,文字,画像,音声など、様々なデータを表現するために使用される.
ビットパターンを2進数で表現すると非常に長くなる場合があるため、16進数を使用することも多い.1 byteは16進数では2桁で表現できる。例えば、8 bitのビットパターン\(10101100_2\)は、16進数では\(\texttt{AC}_{16}\)と表現される。
Macアドレスは、ネットワーク機器を識別するための一意のアドレスであり、通常は48ビット(6バイト)で表現される。16進数で表記されることが多く、例えば\(\texttt{00:1A:2B:3C:4D:5E}\)のように表現される。
Windowsでは、コマンドプロンプトでipconfig /allを実行すると、ネットワークアダプターのMACアドレスを確認できる。
44.8 練習問題
情報量の最小単位は_である。一般に、\(n\) bitは_の種類を表現できる。また、8 bitは1 ____に相当する。
44.9 まとめ
| 日本語 | 英語 |
|---|---|
| 10進数 | decimal number |
| 2進数 | binary number |
| 8進数 | octal number |
| 16進数 | hexadecimal number |
| 位取り記数法 | positional notation |
44.10 練習問題
- google classroom
44.11 解答例
- 3進数:
- \(1_{10} = 1_3\)
- \(2_{10} = 2_3\)
- \(3_{10} = 10_3\)
- \(4_{10} = 11_3\)
- \(5_{10} = 12_3\)
- \(6_{10} = 20_3\)
- \(7_{10} = 21_3\)
- \(8_{10} = 22_3\)
- \(9_{10} = 100_3\)
- \(10_{10} = 101_3\)
- 他の記数法から10進数への変換
- \(1101_2 = 13_{10}\)
- \(73_8 = 59_{10}\)
- \(\texttt{CAFE}_{16} = 51966_{10}\)
- 2進数、8進数、16進数の相互変換
- 省略
- 10進数から他の記数法への変換
- \(45_{10} = 101101_2 = 55_8 = \texttt{2D}_{16}\)
- \(100_{10} = 1100100_2 = 144_8 = \texttt{64}_{16}\)
- \(255_{10} = 11111111_2 = 377_8 = \texttt{FF}_{16}\)