12  データ分析ミニプロジェクト

これまでに学んだ方法から,問いに合ったものを選び,グループで一つの問いに答えよう.興味のあるデータを選び,図表と数値を根拠に,わかったことを自分たちの言葉で説明する.

3〜5 人程度のグループで取り組む.分析には 1 回の授業(100 分)を使い,次の授業で 1 グループ 5 分の発表を行う.データ探しは分析の授業までに済ませ,発表資料は二つの授業の間に仕上げる.

12.1 何を調べるか

まず,「このデータから何を知りたいのか」を一つの問いにする.例えば,「人口について調べる」だけでなく,「二つの県で,市区町村の人口分布はどう違うか」のように,何を比べるかを具体的にしよう.

次の分析例を参考にしてよい.教材と同じデータを使う場合は,対象の地域や期間,取り上げる変数などを変え,自分たちの問いを考える.

参考にする章 問いの例
チャプター 9 二つの県で,市区町村の人口の中央値やばらつきはどう違うか
チャプター 10 年代を二つに分けても,3 月の平均気温と開花日の関係は同じか
チャプター 11 アデリーペンギンでは,性別によって体重の分布はどう違うか

12.2 授業前の準備

グループで相談し,分析の授業が始まるまでに,代表者が次の内容を Google Classroom に提出する.

  • メンバーの氏名と,調べたい問いを一文で書いたもの.
  • データファイルと出典の URL.CSV または Excel など,pandas で読み込める形式を選ぶ.
  • データの 1 行が何を表すか,対象の地域・期間,主に使う列と単位.

Colab で実際にファイルを読み込み,先頭の数行が表示できることも確かめておく.最初は,問いに関係する 2〜3 列に注目すると進めやすい.

データが見つからない場合や,読み込みが難しい場合は,教材で配布しているデータから選んでよい.各分析例のダウンロードリンクや 付録 A を参照しよう.スポーツに興味がある場合は,SSDSE-D に収録されているスポーツの行動者率(セクション A.2.4)や,MLB のチーム成績(セクション A.2.6)を使うこともできる.

12.3 分析の授業で行うこと

100 分の授業を,次の流れで進める.

時間 内容
0〜15 分 さくらの例で,問いから結論までの流れを確認する
15〜25 分 グループの問いと分担を確認し,教員に相談する
25〜40 分 行数,列,単位,欠損値を確認し,分析する範囲を決める
40〜80 分 必要な統計量を計算し,図を描いて結果を話し合う
80〜95 分 主要な発見と分析の限界を整理し,発表の構成を考える
95〜100 分 途中結果と,残っている作業や疑問点を提出する

問いに合わせて,必要な方法を選ぶ.例えば,分布を調べるならヒストグラムや代表値,グループを比べるなら箱ひげ図やばらつきの指標を使える.二つの数値変数の関係を調べるなら,散布図と相関係数が候補になる.すべての方法を使う必要はない.

グループでは,データの確認,計算と作図,結果の解釈,発表資料の作成などを分担する.途中で結果を共有し,メンバー全員が主要な図表を説明できるようにしよう.

授業の最後には,その時点の notebook と,主要な図表,暫定的な結論,残っている疑問点を提出する.まだ結論が出ていない場合は,何がわからず,次に何を確かめるかを書く.

12.4 結果をまとめる

発表までに分析を整理し,次の内容をまとめる.

  1. 問い:何を明らかにしたかったか.
  2. データ:出典,対象,1 行の意味,分析した件数と変数.欠損値などへの対応も説明する.
  3. 結果:問いに答える主要な図表を 1〜2 点選び,必要な統計量を示す.
  4. 解釈:図表や数値から何がわかるか,二つか三つの発見を説明する.
  5. 限界:このデータや方法では判断できないことを,少なくとも一つ挙げる.

例えば,「A の方が大きい」と書くだけでなく,何をどの指標で比べ,どのくらい違ったのかを示そう.図には軸の名前と単位を付け,グループを色で分けた場合は凡例も付ける.相関が見られた場合も,それだけで原因を説明したことにはならない.

12.5 発表

発表は 1 グループ 5 分とする.その後の 2 分を質問と次のグループへの交代に使う.

スライドは,表紙を含めて 4〜6 枚程度を目安にする.問い,データ,主要な図表,結論と限界が伝わる構成にし,出典とメンバーの分担も記載する.コード全文を読み上げるのではなく,図表を示して結果を説明しよう.

聞いている人は,他のグループの発表について,「根拠がわかりやすかった発見」と「質問したいこと」をメモする.発表するグループのメンバーは,全員が自分たちの分析について質問に答えられるように準備する.

12.6 提出物

発表前に,グループの代表者が次の二つを提出する.

  • notebook(.ipynb):データの出典,読み込み方法,分析に使ったコードと実行結果を含める.上から順に実行して,図表を再現できることを確かめる.
  • 発表資料(.pptx または .pdf):問い,データ,結果,結論と限界,出典,メンバーの分担を含める.

発表後には,各自が 3〜5 文の振り返りを提出する.自分が担当したこと,分析結果の一つをどう解釈するか,発表や質問を通じて気づいたことを書く.

生成 AI を利用してもよい.利用した場合は,どの作業に使ったかを明記し,コードの動作と結果を自分たちで確認する.

今回扱ったデータや問いは,回帰分析などを学んだ後,期末のプロジェクトで発展させてもよい.