1 システム工学とは
1.1 システム
工学におけるシステム(system)とは、複数の要素が有機的に連繫して、全体として目的を持った仕事をするもの」である 1。
この定義から、システムの特徴を以下のようにまとめることができる。
- 複数の要素が
- 有機的に組み合わされて
- 全体として一定の目的を持っている
例えば、オーケストラは、弦楽器、管楽器、打楽器など、複数の楽器奏者から構成されており、各奏者が協調して音楽作品を演奏するという目的を持っている。また、自動車は、エンジン、車輪、車台などの複数の部品から構成されており、これらの部品が連携して人や物を運ぶという目的を果たしている。
広義的なシステムには、自然システム(natural system)と人工システム(artificial system; human-made system)がある。生態系や太陽系のような自然システムは、何らかの目的を持っているものではない。一方、人工システムは、人間が特定の目的を達成するために作り出したものである。交通システム、経営システムなどは、その典型である。
Exercise 1.1 人工システムの例を3つ挙げ、それぞれの構成要素と目的を説明せよ。
1.2 システム工学
システム工学(systems engineering)は、主として人工システムの設計・開発・保守を研究する工学である。システムズエンジニアリングとも呼ばれる。
システム工学という言葉は、ベル電話研究所(Bell Telephone Laboratories)が1940年代に最初に用いられた (Schlager 1956)。当初は、通信システムの設計・開発を目的としていたが、その後、他の分野にも応用されるようになった。現在では、システム工学の応用範囲は広く、生産システムの設計、交通システムの最適化、情報システムの開発など、多岐にわたる。
システムエンジニアという言葉があるが、コンピュータシステムの設計・開発・保守を担当する人を指す和製英語であり、海外では通用しない。システム工学を専門とする技術者は、システムズエンジニア(systems engineer)と呼ばれる。
1.2.1 システムのライフサイクル
- 概念段階(concept stage)
- 開発段階(development stage)
- 生産段階(production stage)
- 利用段階(utilization stage)
- 支援段階(support stage)
- 廃棄段階(retirement stage)
1.2.2 システム工学の手法
システムを設計・開発・保守するために、システム工学では様々な手法が用いられる。代表的な手法には以下のようなものがある。
- データ分析
- モデリング
- シミュレーション
- 最適化
新明解国語辞典 第七版↩︎