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機械語

法政大学

学習目標

機械語とは

コンピューターが直接理解し、処理できる言語は機械語（Machine Language）という。プログラム内蔵方式を実現するため、機械語は0と1のビット列で表現される。

CPUでは、事前に定義された命令セットアーキテクチャ（ISA）に基づいて、機械語の命令を解釈し、実行する。各命令は、特定の操作を指示するビットパターンで構成されている。

コンピューターで処理するすべてのプログラムは、最終的には機械語に変換され、事前に定義された命令セットに従って実行される。

ISAの種類

RISCCISC
命令数少ない多い
生産コスト低い高い
消費電力低い高い
応用TVなどPC

Pep/9

CPUの種類によって、処理する命令セットは異なる。ここでは、Pep/9という仮想コンピューターを使って、機械語を体験する。

Pep/9の記憶装置は、65536バイトで構成され、アドレスは0000からFFFFまでの範囲で指定される。アドレス(Address)は、記憶装置中の位置を識別するための数字である。Pep/9では、一つのアドレスに1バイトのデータが格納される。

下記の表は、Pep/9の記憶装置でのアドレスと格納されるビットパターンの例である。

アドレスデータ
00000000 1010
00010000 0010
......
FFFF1001 1011

Pep/9では、7つのレジスタを持つ。以下は三つの主要なレジスタの説明である。

命令

Pep/9の命令セットには40種類の命令がある。

命令は、命令部（Instruction Specifier）とオペランド部（Operand Specifier）の2つの部分で構成される。命令部は、命令の種類を示す8ビットのビットパターンである。オペランド部は、命令が操作するデータのアドレスや値を示す16ビットのビットパターンである。そのため、Pep/9の命令は、合計24ビット（3バイト）で表現される。

Pep/9 Instruction Format

Figure 1:Pep/9の命令

また、命令部だけで構成される命令もある。これらの命令は、オペランド部を持たないため、8ビットで表現される。

命令部は以下の3つの部分で構成される。

下では、Pep/9の命令セットの一部を紹介する。

命令説明
0000 0000実行を停止する
1100 raaaメモリからワードをロードする
1101 raaaメモリからバイトをロードする
1110 raaaメモリにワードを格納する
1111 raaaメモリにバイトを格納する
0110 raaaオペランドを加算する
0111 raaaオペランドを減算する

0000 0000は、実行を停止する命令であり、オペコードだけで構成される。

1100 raaaは、メモリからワードをレジスタにロードする命令である。ここで、1100はオペコードで、rはレジスタ指定子、aaaはアドレス指定方式を示す。このような命令は、4ビットのオペコードと、1ビットのレジスタ指定子、3ビットのアドレス指定方式を持つ。

Pep/9 Instruction Specifier

Figure 2:Pep/9のinstruction specifier

レジスタ指定子は、1ビットのビットパターンで、操作対象のレジスタを指定する。Pep/9では、以下の2つのレジスタが使用される。これ以降の例では、レジスタ指定子を0とし、レジスタA（Accumulator）を操作対象とする。Accumulatorは、演算の結果を一時的に保存するレジスタである。

rレジスタ
0Accumulator, A
1Index register, X

アドレス指定方式（addressing mode）は、データを指定する方法を示す。アドレス指定方式には、以下の二つを紹介する。

「Hi」を出力するPep/9の機械語プログラム

「Hi」と出力するPep/9の機械語プログラムを紹介する。

即値アドレス指定を使用する場合は、以下のステップでプログラムを作成する。

  1. 「H」のASCIIコードをレジスタAにロードする。

  2. レジスタAの値をターミナルに出力する。

  3. 「i」のASCIIコードをレジスタAにロードする。

  4. レジスタAの値をターミナルに出力する。

  5. 実行を停止する。

以上のことを機械語で表現すると、以下のようになる。

  1. 1101 0000 0000 0000 0100 1000

  2. 1111 0001 1111 1100 0001 0110

  3. 1101 0000 0000 0000 0110 1001

  4. 1111 0001 1111 1100 0001 0110

  5. 0000 0000

オペコード1101 0000はメモリからレジストAに1バイトの値をロードする命令で、オペランド部は2バイトで構成されるが、最初の1バイトは機能しないため、任意の値を指定できる。ここでは、0000 0000を指定している。

さらに、見やすくするために、16進数で表現すると、以下のようになる。

  1. D0 00 48

  2. F1 FC 16

  3. D0 00 69

  4. F1 FC 16

  5. 00

このプログラムD0 00 48 F1 FC 16 D0 00 69 F1 FC 16 00 zzをPep/9で実行すると、ターミナルに「Hi」と出力される。zzは、プログラム終了を示すためのコードである。

Pep/9のシミュレータは以下の手順でダウンロードできる。

  1. こちらにアクセスする。

  2. 「Download Windows」をクリックして、Pep/9のシミュレータをダウンロードする。

  3. ダウンロードした「Pep9-Installer-941.exe」を実行する。

  4. 「次へ」をクリックして、インストールを進める。

  5. 「インストール」をクリックして、Pep/9のシミュレータをインストールする。

  6. インストールが完了したら、「完了」をクリックして、Pep/9のシミュレータを起動する。

機械語で「Hi」を出力するPep/9のプログラムを実行するには、以下の手順を進む。

  1. シミュレータを起動し、ソースコードを「Object Code」に入力する。

  2. Build > Load Object Codeを選択し、プログラムをロードする。

  3. Build > Executeを選択し、プログラムを実行する。

  4. Outputに「Hi」と出力されることを確認する。

文字列を処理するPep/9の機械語プログラム

二つの文字を受け取り、位置を入れ替え、ターミナルに出力するPep/9の機械語プログラムを紹介する。

このプログラムは、以下のステップで実行される。

  1. キーボードから入力した1文字目をレジスタAにロードする。

  2. レジスタAの値をメモリの任意のアドレスに格納する。

  3. キーボードから入力した2文字目をレジスタAにロードする。

  4. レジスタAの値をターミナルに出力する。

  5. メモリに格納した1文字目をレジスタAにロードする。

  6. レジスタAの値をターミナルに出力する。

  7. 実行を停止する。

以下の機械語プログラムは、上記のステップを実行する。

  1. 1101 0001 1111 1100 0001 0101

  2. 1111 0001 0000 0000 0001 0110

  3. 1101 0001 1111 1100 0001 0101

  4. 1111 0001 1111 1100 0001 0110

  5. 1101 0001 0000 0000 0001 0110

  6. 1111 0001 1111 1100 0001 0110

  7. 0000 0000

16進数で表現すると、以下のようになる。

  1. D1 FC 15

  2. F1 00 16

  3. D1 FC 15

  4. F1 FC 16

  5. D1 00 16

  6. F1 FC 16

  7. 00

このプログラムD1 FC 15 F1 00 16 D1 FC 15 F1 FC 16 D1 00 16 F1 FC 16 00 zzをPep/9で実行すると、キーボードから入力した2文字の位置が入れ替わり、ターミナルに出力される。

  1. プログラムをObject Codeに入力する。

  2. 「ab」をInputに入力する。

  3. Build > Load Object Codeを選択し、プログラムをロードする。

  4. Build > Executeを選択し、プログラムを実行する。

  5. Outputに「ba」と出力されることを確認する。

練習問題

  1. 即値アドレス指定を使用し、「Hosei」と出力するPep/9の機械語プログラムを作成せよ。ただし、オペランド部の最初のバイトは16進数の00とすること。プログラムの最後にzzを追加すること。

  2. 3文字の文字列を受け取り、位置を入れ替え、ターミナルに出力するPep/9の機械語プログラムを作成せよ。例えば、入力が「abc」の場合、出力は「cba」となること。

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